第4章 日本の主なプログラム
精研式・まめの木式・鳥取大学式・奈良方式・肥前式
日本には複数のペアレント・トレーニングプログラムがあり、それぞれ開発経緯や対象、特徴が異なります。この章では代表的な5つのプログラムを紹介し、違いを比較します。
1. 精研式ペアレント・トレーニング
開発元:国立精神・神経医療研究センター(精研)
対象:ADHD・発達障害のある子どもの保護者
回数:全10回
特徴:日本で最も普及しているプログラム。UCLA(カリフォルニア大学)のプログラムをベースに日本の文化に合わせて改編。行動療法の理論に基づき、体系的にスキルを学ぶ。
主な内容:行動の観察と記録→行動の3分類→褒め方→指示の出し方→無視の方法→タイムアウト→トークンエコノミー→まとめ
2. まめの木式ペアレント・トレーニング
開発元:まめの木クリニック(埼玉県)
対象:発達障害のある子どもの保護者
回数:全6回
特徴:精研式を簡略化し、より実施しやすくしたプログラム。回数が少ないため、忙しい保護者にも参加しやすい。自治体での実施に適しており、全国に広がっている。
主な内容:行動の観察→好ましい行動を褒める→好ましくない行動への対応→指示の出し方→環境調整→まとめ
3. 鳥取大学式ペアレント・トレーニング
開発元:鳥取大学
対象:知的障害を伴う発達障害のある子どもの保護者
回数:全6回
特徴:知的障害のある子どもへの対応に特化。視覚支援や構造化など、知的障害に配慮した具体的な工夫を学べる。行動の理解と環境調整を重視。
主な内容:行動の理解→具体的な褒め方→環境調整と構造化→視覚支援の活用→困った行動への対応→日常生活への応用
4. 奈良方式ペアレント・トレーニング
開発元:奈良教育大学
対象:幅広い子育て困難を抱える保護者
回数:全5回
特徴:発達障害の診断の有無にかかわらず、「子育てに困っている保護者」全般を対象としている。回数が最も少なく取り組みやすい。教育現場との連携を重視。
主な内容:子どもの良いところ探し→行動の観察と分類→褒め方の練習→困った行動への対応→子育ての振り返り
5. 肥前式ペアレント・トレーニング
開発元:肥前精神医療センター(佐賀県)
対象:知的障害のある子どもの保護者
回数:全10回
特徴:日本で最も早くペアトレを導入したプログラムの一つ。知的障害の子どもへの具体的な対応法に重点を置き、家庭での日常生活スキルの指導法を学ぶ。
主な内容:療育の知識→行動観察→課題の設定→教え方の工夫→褒め方→問題行動への対応→般化と維持
プログラム比較表
| プログラム | 回数 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 精研式 | 10回 | ADHD・発達障害 | 最も普及、体系的 |
| まめの木式 | 6回 | 発達障害 | 精研式の簡略版、自治体向け |
| 鳥取大学式 | 6回 | 知的障害+発達障害 | 視覚支援・構造化に特化 |
| 奈良方式 | 5回 | 子育て困難全般 | 診断不問、最少回数 |
| 肥前式 | 10回 | 知的障害 | 日常生活スキル重視 |
どのプログラムを選べばいい?
プログラムの選び方に正解はありません。お住まいの地域で利用可能なものを選ぶのが現実的です。選択肢がある場合は、以下のポイントで検討しましょう。
- お子さんの状態 — 知的障害があれば鳥取大学式・肥前式、ADHDなら精研式が合いやすい
- スケジュール — 忙しい方は回数の少ない奈良方式・まめの木式が参加しやすい
- 診断の有無 — 診断がない場合は奈良方式が受けやすい
- 目的 — 日常生活スキルを教えたいなら肥前式、子育て全般なら奈良方式
どのプログラムも「子どもの行動を理解し、適切な対応を学ぶ」という基本理念は共通しています。まずは地域で開催されているプログラムに参加してみることをお勧めします。