第2章 ペアトレで学ぶこと
行動の3分類・褒め方・CCQ
ペアレント・トレーニングでは、子どもの行動を理解し、効果的に関わるための具体的な方法を学びます。この章では、ペアトレの中核となる5つのテーマを解説します。
1. 行動の3分類 — 子どもの行動を整理する
ペアトレでは、子どもの行動を次の3つのカテゴリに分けて考えます。これにより、どの行動にどう対応すべきかが明確になります。
🟢 好ましい行動(増やしたい行動)
挨拶をする、宿題に取り組む、片付けるなど、今後も続けてほしい行動です。
対応:褒める・注目する→ この行動を強化し、増やしていきます。
🟡 好ましくない行動(減らしたい行動)
ぐずぐずする、食事中に立ち歩く、兄弟にちょっかいを出すなど、困るけれど危険ではない行動です。
対応:無視(注目を外す)+ 好ましい行動を待って褒める→ 注目しないことで行動を減らし、良い行動に切り替わったら褒めます。
🔴 許しがたい行動(危険な行動)
人を叩く、物を壊す、飛び出すなど、本人や周囲の安全に関わる行動です。
対応:即座に制止し、短く明確に伝える→ 感情的にならず、落ち着いて対応します。必要に応じてタイムアウトやペナルティを使います。
この3分類を使うことで、「すべてを叱る」のではなく、行動に合わせた対応を選べるようになります。多くの保護者が「分類するだけで気持ちが楽になった」と語っています。
2. 効果的な褒め方 — 「好ましい行動」を増やすコツ
ペアトレで最も重要なスキルの一つが「褒める」技術です。ただ「えらいね」と言うだけでなく、より効果的な褒め方のポイントがあります。
褒め方の5つのポイント
- すぐに褒める — 行動の直後に声をかける(時間が経つと効果が薄れる)
- 具体的に褒める — 「えらいね」ではなく「自分で靴を揃えたんだね」と行動を言葉にする
- 笑顔で・近くで — 目を見て、子どもの近くで伝える
- 一貫して褒める — 同じ行動には毎回、同じように褒める
- 25%ルール — 完璧でなくても、少しでもできていたら褒める(ハードルを下げる)
特に「25%ルール」は重要な考え方です。100%できたときだけ褒めるのではなく、取りかかっただけでも、途中まででも褒める。これにより子どもは「認められている」と感じ、自発的に行動するようになります。
3. CCQ — 指示の出し方の基本
子どもにうまく指示を伝えるための原則がCCQです。
C – Calm(穏やかに)
感情的にならず、落ち着いたトーンで伝えます。怒鳴ると子どもは「指示の内容」より「怒られた」ことに注目してしまいます。
C – Close(近づいて)
離れた場所から叫ぶのではなく、子どもの近くまで行って伝えます。距離が近いほど、指示は伝わりやすくなります。
Q – Quiet(静かに)
大きな声ではなく、小さめの声で伝えます。静かに話すと、子どもは「聞こう」という姿勢になりやすくなります。
CCQに加えて、指示は短く・肯定的に出すことが大切です。「走らないで!」(否定形)より「歩こうね」(肯定形)、「いつまでゲームやってるの!」より「あと5分でゲーム終わりにしようね」と伝えると、子どもは何をすればよいか理解しやすくなります。
4. 困った行動への対応 — 「無視」と「タイムアウト」
計画的な無視(注目の撤去)
「好ましくない行動」に対して、意図的に注目を外すテクニックです。ただし、これは「無関心」とは違います。
計画的な無視のやり方:
- 好ましくない行動が出たら、目を合わせない・声をかけない・反応しない
- ただし、子どもの安全は確保する(見守りは続ける)
- 好ましい行動に切り替わったら、すかさず褒める
- 最初は行動がエスカレートすることがある(「消去バースト」)→ これは効果が出ている証拠
タイムアウト
「許しがたい行動」に対して、子どもを一時的に刺激のない場所に移し、クールダウンさせる方法です。罰ではなく、感情を落ち着かせるための時間として使います。目安は「年齢×1分」(5歳なら5分)です。
5. 環境調整とトークンエコノミー
環境調整(前もって準備する)
問題が起きてから対応するだけでなく、問題が起きにくい環境を整えることも重要です。
- 気が散るものを片付ける(テレビを消す、おもちゃを見えない場所に置く)
- 予定を事前に伝える(「あと10分で出かけるよ」と予告する)
- 選択肢を用意する(「赤い服と青い服、どっちにする?」)
- 視覚的なスケジュール表を使う
トークンエコノミー(ごほうびシステム)
好ましい行動ができたらシール・スタンプなどの「トークン」を渡し、一定数たまったらごほうびと交換する仕組みです。
トークンエコノミーの設計ポイント:
- 対象行動を具体的に決める(「お片付けをする」「朝の支度を自分でする」)
- ごほうびは「もの」だけでなく「体験」(公園に行く、一緒にゲームする)もOK
- 最初はハードルを低く、成功体験を積ませる
- 徐々にトークンなしでも行動できるように移行していく
まとめ
ペアトレで学ぶ内容は、すべて「子どもの行動に注目し、適切な対応を選ぶ」という一貫した考え方に基づいています。
- 行動の3分類で「何に対応するか」を整理する
- 褒め方を磨いて「好ましい行動」を増やす
- CCQで指示を伝わりやすくする
- 計画的な無視・タイムアウトで困った行動に対応する
- 環境調整とトークンエコノミーで予防的に関わる
次の章では、実際にペアトレを受けるまでの流れを解説します。