
「ペアレント・トレーニングを受けたいけれど、どこに相談すればいいかわからない」——そんなとき、まず頼りにしたいのが発達障害者支援センターです。全国に約100箇所設置されているこのセンターは、発達障害のある方とその家族を支える地域の総合相談窓口です。
本記事では、支援センターの役割や利用方法、ペアトレとのつながりについて詳しく解説します。
発達障害者支援センターとは
発達障害者支援センターは、2005年施行の発達障害者支援法(第14条〜第19条)に基づいて設置された専門機関です。都道府県と政令指定都市に設置義務があり、相談はすべて無料で利用できます。
基本情報
| 設置数 | 全国約97〜100箇所(2021年時点) |
| 設置根拠 | 発達障害者支援法 第14条〜第19条 |
| 運営主体 | 約75%が民間(社会福祉法人・NPO等)、約25%が自治体直営 |
| 費用 | すべて無料 |
| 受付時間 | 平日 9:00〜17:00(施設により異なる) |
| 利用条件 | お住まいの都道府県・指定都市のセンターを利用。診断がなくても相談可能 |
3つの支援の柱
1. 相談支援
- 日常生活の困りごと全般
- コミュニケーションや行動の悩み
- 学校・職場・保育の問題
- 福祉制度や医療の情報提供
- 関係機関への紹介・連携
2. 発達支援
- 発達検査・アセスメント
- 家庭での療育方法の助言
- 個別支援計画の作成
- 療育・教育方法の提案
- 保育所や学校への巡回支援
3. 就労支援
- 仕事に関する相談・助言
- 就労情報の提供
- ハローワークとの連携
- 職場環境の調整支援
- 就労後のフォローアップ
ペアトレ・ペアプロとのつながり
発達障害者支援センターは、ペアレント・トレーニングの実施機関であり、地域展開のハブでもあります。
- ペアレント・プログラム/ペアレント・トレーニングの直接実施:グループ形式の保護者向け講座を開催
- ファシリテーター養成:自治体職員や支援者向けにペアトレのファシリテーター研修を実施
- 市町村への展開支援:地域の実情に合わせたプログラムの導入をサポート
- ペアレント・メンター事業:先輩保護者によるピアサポート活動の運営
「ペアトレを受けたい」と思ったら、お住まいの地域の支援センターに相談するのがもっとも確実な第一歩です。
ペアトレを実施している主な支援センター
東京都発達障害者支援センター(TOSCA)
2023年1月より、年齢別に2つのセンターに分かれています。
- こどもTOSCA(18歳未満):世田谷区船橋1-30-9 / TEL 03-6413-0231
- おとなTOSCA(18歳以上):文京区大塚4-45-16 / TEL 03-6902-2082
- 行動理論に基づくペアトレプログラムをロールプレイや宿題で実践的に学べます
千葉県発達障害者支援センター(CAS)
- ペアレント・プログラム、ペアレント・トレーニングをグループ形式で実施
- ファシリテーター研修や支援者向け講座も充実
- ペアレント・メンター相談サービスも提供
埼玉県発達障害総合支援センター
- ペアレント・プログラム支援者育成研修を実施し、ファシリテーター認定も行う
- 県レベルと市レベルの両方でペアレント・メンター事業を展開
- 日本で最も充実したペアトレ体制の一つ
大阪市発達障がい者支援センター(エルムおおさか)
- ペアレント・トレーニング講座を定期的に開催
- 保護者向けの支援講座も実施
- TEL 06-6797-6931 / 大阪市在住の方が対象
支援センターの探し方
お住まいの地域の支援センターは、以下の方法で見つけることができます。
公式ディレクトリ
国立障害者リハビリテーションセンターが運営する「発達障害情報・支援センター」のウェブサイトで、全国すべてのセンターの一覧と連絡先を確認できます。
- 発達障害情報・支援センター:https://www.rehab.go.jp/ddis/
- 全国センター一覧:https://www.rehab.go.jp/ddis/action/center/
その他のリソース
- LITALICO 発達ナビ:施設詳細や口コミ情報も確認できます
- 大人の発達障害ナビ:マップ形式で最寄りのセンターを探せます
- 各都道府県の福祉課:電話で問い合わせると案内してもらえます
発達障害者支援法の改正(2016年)
2016年の法改正により、支援体制がさらに強化されました。主な改正ポイントは以下のとおりです。
- 切れ目のない支援:乳幼児期から成人期まで、医療・福祉・教育・就労の各分野で継続的な支援を提供
- 地域協議会の設置:自治体職員、支援センター、当事者・家族、専門家が参加する「発達障害者支援地域協議会」が新設
- 個人の尊厳の尊重:障害の有無にかかわらず、個性と自律を尊重した生活の保障が明文化
誰でも相談できます
支援センターへの相談には診断は不要です。以下のような方が利用できます。
- 発達障害のある本人
- 保護者・家族
- 「うちの子、もしかして…」と気になっている方
- 学校・保育園の先生
- 支援機関の職員
まずは電話してみましょう
「ペアトレを受けたい」「子どもの発達が気になる」——どんな小さな悩みでも構いません。お住まいの地域の支援センターに電話してみてください。専門のスタッフが、あなたに合った支援やプログラムを一緒に探してくれます。
支援センターへの相談体験エピソード
実際に支援センターに相談した保護者の声を紹介します。
【Jさん・3歳児の母】
「3歳児健診で『様子を見ましょう』と言われたものの、何をどう様子を見ればいいか分からず、不安でいっぱいでした。思い切って支援センターに電話したところ、『まずは一度来てみませんか?』と優しく声をかけてもらえました。面談では、子どもの発達について丁寧に説明してもらい、地域のペアレント・プログラムを紹介してもらいました。あのとき電話していなかったら、ずっと一人で悩んでいたと思います。」
【Kさん・小学4年生の父】
「ADHDの診断を受けた息子のことで相談に行きました。ペアトレの講座があることを教えてもらい、妻と一緒に受講しました。それだけでなく、学校の先生への説明の仕方についてもアドバイスをもらえて、学校との連携がスムーズになりました。支援センターは『ペアトレの入口』としてだけでなく、家庭と学校をつなぐ役割も果たしてくれました。」
【Lさん・中学2年生の母】
「息子が不登校になり、どこに相談すればいいか分かりませんでした。かかりつけ医に相談したところ支援センターを紹介されました。センターでは、教育委員会や適応指導教室との連携をしてもらい、私自身にはペアトレの受講を勧めてもらいました。ペアトレで行動の3分類を学んだことで、息子の行動を冷静に見られるようになり、少しずつですが関係が改善しています。」
年齢・状況別:支援センターへの相談のポイント
乳幼児期(0〜5歳)の保護者
健診で指摘を受けた方、園での集団生活に不安がある方は、早めに相談することをおすすめします。この時期の相談で多いテーマは「発達の遅れが心配」「イヤイヤ期がひどくて対応できない」「癇癪が激しい」などです。早期に適切な支援につながることで、保護者のストレスが軽減し、お子さんの発達も促進されます。幼児期のペアトレを紹介してもらえることもあります。
学童期(6〜12歳)の保護者
就学先の選択(通常学級・通級・支援学級)に迷っている方、学校でのトラブルが増えている方は、支援センターに相談すると具体的なアドバイスをもらえます。特に、学校との連携について困っている場合は、センターのスタッフが学校への訪問支援を行ってくれることもあります。学習面の困りごとがある場合は、学習障害の可能性についても相談できます。
思春期〜成人期の本人・保護者
不登校、進路の悩み、就労に関する相談にも対応しています。成人後の方の「大人の発達障害」に関する相談も増えており、多くのセンターが対応しています。自分自身が発達障害かもしれないと感じている方も、まずはセンターに相談してみてください。
支援センターを最大限活用するためのコツ
支援センターは無料で利用できる貴重なリソースですが、効果的に活用するためにいくつかのコツがあります。
事前に情報を整理しておく
初回の面談では、お子さんの状況を伝える必要があります。事前に以下の情報を整理しておくとスムーズです。
- お子さんの年齢・性別・在籍先(園・学校の名前)
- これまでの経緯:健診での指摘、医療機関の受診歴、診断名(ある場合)
- 具体的に困っていること:「朝の支度に1時間以上かかる」「スーパーで走り回る」「かんしゃくが1日5回以上ある」など、できるだけ具体的に
- これまでに試したことと、その結果
- 支援センターに期待すること:「ペアトレを受けたい」「学校との連携をサポートしてほしい」など
定期的に連絡を取る
一度相談して終わりではなく、定期的に連絡を取り続けることが大切です。お子さんの状況は年齢とともに変化します。新たな課題が出てきたとき、改めて相談することで、そのときのお子さんに合った支援を紹介してもらえます。特に就学・進学・就労などのライフステージの変わり目には、積極的に相談しましょう。
複数の支援を組み合わせる
支援センターは「ワンストップ窓口」として、さまざまな支援制度を紹介してくれます。ペアトレだけでなく、ペアレント・メンターによるピアサポート、放課後等デイサービス、医療機関での療育など、お子さんと家庭の状況に合わせた複数の支援を組み合わせることで、より効果的なサポートが得られます。「何が使えるか分からない」という方こそ、センターに相談してみてください。
支援センター以外のペアトレ講座の探し方
支援センターだけでなく、以下のルートでもペアトレ講座を探すことができます。
- 当サイトのイベント一覧:全国のペアトレ講座の開催情報を地域別に掲載しています。無料・有料、対面・オンラインなどで絞り込めます
- 市区町村の広報誌・ウェブサイト:自治体が主催する講座は、広報紙やホームページに掲載されます。「ペアレント・トレーニング」「子育て支援講座」で検索してみてください
- かかりつけ医(小児科・児童精神科):通院中の場合は、主治医に「ペアトレを受けたい」と相談すると、病院内で実施しているプログラムや連携先を紹介してもらえることがあります
- 児童発達支援センター・放課後等デイサービス:利用中の療育機関でペアトレを実施していることもあります
- NPO法人・民間の支援団体:有料ですが、少人数制やオンライン対応など柔軟な形態で実施していることが多いです
費用の目安についてはペアトレの費用ガイドを、受講までの具体的な流れは受講の流れの記事をそれぞれご参照ください。
支援センターと学校・教育機関の連携
支援センターは、保護者と学校をつなぐ「架け橋」としての役割も担っています。お子さんの特性について学校に伝えたいが、うまく説明できない場合や、学校の対応に不安がある場合、支援センターのスタッフが同席して面談をサポートしてくれることもあります。
また、一部のセンターでは、教員向けの研修(ティーチャー・トレーニング)を実施し、学校全体での発達障害理解を促進しています。学校・教育現場でのペアトレと支援センターの連携が進むことで、家庭と学校が同じ方向を向いてお子さんを支える体制が整います。
よくある質問(Q&A)
Q1. 相談の予約は必要ですか?
A. はい、多くのセンターは予約制です。まずは電話で「相談したい」と伝えてください。初回の面談日を調整してもらえます。予約なしの電話相談を受け付けているセンターもありますので、まずは電話をかけてみるのが一番です。
Q2. 相談したら必ずペアトレを受けなければなりませんか?
A. いいえ、強制されることはありません。相談の中で保護者の状況やニーズを聞き取り、ペアトレが適している場合に紹介されます。ペアトレ以外の支援(療育、医療、ペアレント・メンターなど)が適切な場合は、そちらを案内されることもあります。
Q3. 住んでいる地域にセンターがない場合はどうすればいいですか?
A. 全都道府県・政令指定都市に設置されていますので、必ずどこかにあります。ただし、自宅から遠い場所にある場合もあります。その場合は、電話での相談から始めることができます。また、市区町村の子育て支援課や障害福祉課に相談すると、より身近な相談窓口を紹介してもらえることがあります。
Q4. 支援センターとかかりつけ医の両方に相談してもいいですか?
A. はい、むしろ両方に相談することをおすすめします。かかりつけ医(小児科・児童精神科)は医療面の支援を、支援センターは生活面・教育面の支援を得意としています。双方に情報を共有することで、より包括的な支援を受けられます。支援センターのスタッフがかかりつけ医と連携してくれることもあります。
まとめ
発達障害者支援センターは、ペアトレへの入口であり、子育て全体を支えてくれる心強いパートナーです。相談無料・診断不要で、電話一本から始められます。ペアトレ講座の紹介はもちろん、ペアレント・メンターとの橋渡し、学校との連携支援など、さまざまな形で保護者をサポートしてくれます。
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