
ペアレント・トレーニング(ペアトレ)で最初に学ぶのが「行動の3分類」です。子どもの行動を3つに分けて考えることで、「いつも叱ってばかり」の悪循環から抜け出せます。
なぜ行動を分類するのか?
子育ての中で、こんな経験はありませんか?
- 「ダメ!」「やめなさい!」と言う回数が一日に何十回もある
- 子どもの良いところより、困ったところばかり目につく
- 叱っても叱っても同じ行動を繰り返す
これは保護者の対応が悪いのではありません。すべての行動に同じ対応(叱る)をしているからです。行動を分類すると、それぞれに最適な対応が見えてきます。
3つの分類と対応方法
🟢 好ましい行動(増やしたい行動)
例:「おはよう」と挨拶する、自分で靴を揃える、宿題に取りかかる、弟におもちゃを貸す
対応:すぐに・具体的に褒める
「自分でお片付けしたんだね、すごいね!」と行動を言葉にして伝えます。褒められることで、その行動はどんどん増えていきます。
🟡 好ましくない行動(減らしたい行動)
例:ぐずぐずする、食事中に立ち歩く、何度も同じ質問をする、兄弟にちょっかいを出す
対応:計画的に無視する(注目を外す)
危険でない「困った行動」には、あえて反応しません。そして好ましい行動に切り替わった瞬間にすかさず褒めます。「注目されなくなった行動は減る」という行動の原理を活用します。
🔴 許しがたい行動(危険な行動)
例:人を叩く・蹴る、物を投げて壊す、道路に飛び出す、自分を傷つける
対応:即座に・短く・毅然と制止する
感情的に怒鳴るのではなく、落ち着いた声で「叩くのはダメ」と短く伝え、その場から離します。この行動だけは見過ごしません。
実践してみよう:我が家の行動リスト
まずは紙を3つに区切り、お子さんの行動を書き出してみましょう。
ポイント:
- 「好ましい行動」から書き始める(良いところ探しが大切!)
- 行動は具体的に書く(「いい子にする」ではなく「食事中に座っている」)
- 迷ったら「危険かどうか」で判断(危険でなければ🟡に分類)
- 最初は🟢を意識的に増やすことに集中する
多くの保護者が「分類してみたら、好ましい行動のほうが実は多かった」と気づきます。困った行動にばかり注目していた視点が変わる、それだけでも大きな一歩です。
よくある疑問
Q. 🟡と🔴の境界がわかりません。
基本的には「本人や他人の安全に関わるかどうか」で判断します。安全に関わるなら🔴、そうでなければ🟡です。判断に迷う場合はペアトレの講座で相談してみましょう。
Q. 好ましい行動が見つかりません。
「当たり前のこと」も好ましい行動です。朝起きた、ご飯を食べた、学校に行った — これらも立派な好ましい行動。ハードルを下げて探してみてください。
行動の3分類について、より詳しくはペアトレ完全ガイド 第2章をご覧ください。ペアトレ全体について知りたい方は完全ガイドもどうぞ。
年齢別:行動の3分類の具体例
子どもの年齢によって、3分類に入る行動の内容は変わります。お子さんの年齢に合った具体例を参考にしてみてください。
2〜3歳の場合
🟢 好ましい行動:「ちょうだい」と言える、おもちゃを箱に入れる、「ありがとう」が言える、手をつないで歩ける
🟡 好ましくない行動:食事中に食べ物を投げる、泣いてお菓子を要求する、着替えを嫌がる、寝る時間になっても遊びたがる
🔴 許しがたい行動:友達を噛む、道路に飛び出す、高いところによじ登る
この時期はイヤイヤ期の真っ最中で、🟡に分類される行動が多くなるのは自然なことです。「イヤ!」と言うこと自体は自己主張の発達であり、🔴ではなく🟡に分類します。
4〜6歳の場合
🟢 好ましい行動:自分で着替える、食事中に座っている、友達と順番を守れる、「ごめんね」が言える、お手伝いをする
🟡 好ましくない行動:何度呼んでも来ない、ぐずぐずする、きょうだいにちょっかいを出す、食べ物の好き嫌いが激しい
🔴 許しがたい行動:友達を叩く・蹴る、物を壊す、ハサミを人に向ける
小学生の場合
🟢 好ましい行動:宿題に自分から取りかかる、忘れ物をチェックする、時間を見て行動する、困ったときに相談できる
🟡 好ましくない行動:ゲームをなかなかやめない、ダラダラする、言い訳をする、部屋を片付けない
🔴 許しがたい行動:いじめに加担する、万引き、自傷行為、火遊び
分類のコツ:迷ったときの判断基準
行動を3つに分類しようとすると、「これは🟡?それとも🔴?」と迷うことがよくあります。そんなときに役立つ判断基準を紹介します。
- 安全基準で判断する — 本人や周囲の人の身体的安全に関わるなら🔴、そうでなければ🟡です。「イライラするかどうか」ではなく「危険かどうか」で判断します
- 頻度で判断する — たまにやるなら🟡でも、毎日のように繰り返して生活に支障が出ているなら対応の優先度を上げましょう
- 発達段階を考慮する — 2歳児が食事中に立ち歩くのと、6歳児が立ち歩くのでは意味が違います。年齢相応かどうかも判断材料です
- 迷ったら🟡にする — 判断に迷うということは🔴ほど深刻ではないということ。🟡に分類して「注目を外す」対応から始めましょう
- 一人で判断しない — ペアトレ講座のグループワークで他の保護者の意見を聞くと、新しい視点が得られます
行動の3分類を続けるとどう変わる? — 実践者のエピソード
ある保護者は、5歳の男の子の行動を3分類してみたところ、🟡と🔴ばかりが思い浮かび、🟢がなかなか書けなかったそうです。「うちの子には良いところがないのかも」と落ち込みかけたとき、講師から「当たり前にできていることも書いてみてください」とアドバイスされました。
そこで改めて考えてみると、「毎朝自分で起きてくる」「食事を残さず食べる」「弟に絵本を読んであげる」「お風呂で自分の体を洗える」など、たくさんの🟢が見つかりました。「困った行動にばかり目がいっていただけで、実はこんなにできていたんだ」と気づいたそうです。
この気づきをきっかけに、🟢の行動を見つけるたびに褒めるようにしたところ、2週間ほどで子どもの表情が明るくなり、🟡の行動も自然と減っていったとのこと。「問題行動を減らそうとするより、良い行動を増やすほうが楽だし、効果も早い」と実感したそうです。
3分類と他のペアトレスキルの組み合わせ
行動の3分類は、ペアトレで学ぶ他のスキルと組み合わせることで、より大きな効果を発揮します。
- 🟢 × 効果的な褒め方 — 好ましい行動を見つけたら、すぐに・具体的に褒める。「お片付けできたね!」「自分から宿題を始めてえらいね!」と行動を言葉にして伝えます
- 🟡 × 計画的無視 — 好ましくない行動には、安全な範囲であえて反応しません。注目されなくなった行動は次第に減っていきます。そして好ましい行動に切り替わった瞬間にすかさず褒めましょう
- 🔴 × CCQ — 危険な行動を制止するときも、穏やかに(Calm)、近づいて(Close)、静かに(Quiet)伝えることを意識します。感情的に怒鳴ると、子どもは「怒られた」ことしか記憶に残りません
- 全体 × 環境調整 — そもそも🟡や🔴の行動が起きにくい環境を整えることで、叱る場面自体を減らせます。おもちゃの収納場所を子どもの手が届く高さにする、危険な物は手の届かない場所にしまうなどの工夫が効果的です
「計画的無視」を成功させるポイント
🟡(好ましくない行動)への対応として「計画的無視(注目を外す)」がありますが、これは多くの保護者が「難しい」と感じるスキルの一つです。成功のためのポイントを押さえておきましょう。
- 「無視」は「放置」ではない — 安全は常に確認します。目は離さず、でも反応しないという姿勢です
- 最初は行動がエスカレートする — これは「消去バースト」と呼ばれる現象で、注目を得ようとして行動が一時的に強くなります。ここで折れずに一貫した対応を続けることが重要です
- 家族全員で方針を統一する — お母さんが無視しても、お父さんやおじいちゃんが反応してしまうと効果がなくなります
- 好ましい行動に切り替わった瞬間を逃さない — 泣き叫んでいた子が落ち着いたら、すぐに「落ち着けたね、えらいね」と褒めます。この切り替えが最も大切なポイントです
- 自分の気持ちもケアする — 子どもが泣いているのを見守るのは精神的につらいもの。自分を責めず、「今は正しい対応をしている」と自分に言い聞かせましょう
計画的無視は、かんしゃく対応の場面でも非常に有効なスキルです。また、怒鳴らない子育てを目指す上でも欠かせない技術です。
発達特性がある子どもの3分類のコツ
ADHDやASDなどの発達特性がある子どもの場合、行動の3分類には少し工夫が必要です。
- 特性に起因する行動は🟡にする — ADHDの子どもが授業中に立ち歩くのは「しつけ不足」ではなく特性です。🔴ではなく🟡に分類し、環境調整で対応します
- 🟢のハードルを下げる — 定型発達の子どもと同じ基準で🟢を設定すると、褒める機会がなくなります。「5分間座れた」「1問だけ宿題をやった」も立派な🟢です
- 感覚過敏を考慮する — 大きな音や特定の触感が苦手で泣き叫ぶのは、わがままではなく感覚の特性です。この場合は叱るのではなく、環境調整で刺激を減らすことが先決です
- パニック時は安全確保が最優先 — 自分や他人を傷つける行為は🔴として対応しますが、パニック状態の子どもに長い説教は逆効果です。安全を確保し、落ち着くのを待ちましょう
発達特性と子育てについては、グレーゾーンの子育てや育児ノイローゼとペアトレの記事も参考にしてください。
よくある質問(Q&A)追加編
Q. 行動の分類は一度決めたら変えてはいけませんか?
A. いいえ、むしろ定期的に見直すことが大切です。子どもは日々成長しますし、保護者の価値観も変わります。「3か月前は🟡だったけど、今は🟢にできるようになった」という変化を記録しておくと、お子さんの成長が実感できます。
Q. きょうだいで同じ行動でも分類が変わりますか?
A. 変わることがあります。2歳の弟が食事中に手づかみで食べるのは発達段階として普通(🟢に近い)ですが、6歳の姉が同じことをするなら🟡に分類するかもしれません。年齢や発達段階に応じた判断が必要です。
Q. 学校や園でも3分類を共有したほうがいいですか?
A. 可能であれば共有をおすすめします。家庭と学校・園で同じ方針で対応すると、子どもにとって「何が期待されているか」が明確になり、行動が安定しやすくなります。担任の先生に「家では行動の3分類を使っています」と伝えるだけでも、連携のきっかけになります。
Q. 3分類を始めたいのですが、一人では不安です。
A. ペアトレ講座に参加すると、講師のサポートを受けながらグループで実践できます。イベント一覧ページからお近くの講座を探してみてください。ペアトレの探し方ガイドも参考になります。受講の費用が気になる方は費用ガイドをご覧ください。
3分類を家族で共有する方法
行動の3分類は、家族全員が同じ方針で対応することで最大の効果を発揮します。ただし、配偶者や祖父母に「行動を3つに分けて…」と説明しても、すぐには伝わらないかもしれません。家族で共有するための実践的な方法を紹介します。
- 冷蔵庫にリストを貼る — 紙を3色(緑・黄・赤)に分けて、具体的な行動と対応を書き出します。「叩く→すぐに制止」「ぐずる→反応しない」「お片付け→すぐ褒める」のように、シンプルに書くのがポイントです
- まずは結果を見せる — 自分が実践して子どもが変わった姿を見せるのが一番の説得材料です。「最近子どもが落ち着いたね」と家族が気づいたタイミングで、やっていることを説明しましょう
- 完璧を求めない — 家族全員が100%同じ対応をするのは現実的ではありません。まずは「🔴の行動だけは全員で一貫する」というレベルから始めましょう
- ペアトレ講座に一緒に参加する — ご夫婦で参加できるプログラムも増えています。専門家から直接説明を聞くことで、理解が深まります
行動記録をつけてみよう
3分類をさらに効果的に使うために、1週間だけでも「行動記録」をつけてみることをおすすめします。
やり方はシンプルです。お子さんの行動と、それに対する自分の対応、結果を簡単にメモします。
(例)
- 朝7:00 — 自分で起きてきた(🟢)→「自分で起きられたね!」と褒めた → 嬉しそうにしていた
- 朝7:30 — 着替えをぐずった(🟡)→ 反応せず待った → 3分後に自分で着替え始めた → 「着替えられたね!」と褒めた
- 夕方17:00 — 弟を叩いた(🔴)→ 「叩くのはダメ」と短く伝え、離した → 落ち着いた後「嫌だったんだね。でも叩かないで”やめて”って言おうね」と伝えた
記録をつけると、「思ったより🟢が多い」ことに気づいたり、「🟡の行動が特定の時間帯に集中している」といったパターンが見えてきたりします。パターンがわかれば、環境調整で先手を打つこともできます。
行動の3分類は、ペアトレの出発点であり、すべてのスキルの土台です。まずはお子さんの行動を書き出すところから始めてみませんか?一人で始めるのが不安な方は、ペアトレ講座に参加して、講師やグループメンバーと一緒に取り組むのがおすすめです。


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