ペアレント・トレーニングは、医療機関や福祉施設で行われるものと思われがちですが、近年は学校や教育現場でも実施されるケースが増えています。特別支援学校や放課後等デイサービスを中心に、家庭と学校が連携した取り組みが広がりつつあります。
本記事では、教育現場でのペアトレの実施例、家庭と学校の連携方法、放課後等デイサービスでのペアトレについて解説します。
学校でペアトレが行われる背景
文部科学省の調査によると、通常の学級に在籍する児童生徒のうち約8.8%(2022年調査)が学習面や行動面で困難を示しています。こうした子どもたちの支援には、学校だけでなく家庭での関わり方も重要です。
そこで注目されているのが、学校を拠点としたペアレント・トレーニングです。保護者が学校と同じ方針で子どもに関わることで、一貫した支援環境が生まれ、子どもの行動改善効果が高まります。
実施事例:気仙沼支援学校「ひまわり教室」
宮城県立気仙沼支援学校では、2014年から「ひまわり教室」という名前でペアトレを実施しています。厚生労働省のペアレント・トレーニング実践ガイドブックにも掲載された先進的な取り組みです。
プログラムの特徴
| 実施回数 | 全6回+1か月後のフォローアップ(計7回) |
| 1回の時間 | 約2時間 |
| 参加者数 | 5〜6名の少人数制 |
| 年間実施 | 年3クール(Ⅰ期: 4〜9月、Ⅱ期: 7〜12月、Ⅲ期: 10〜3月) |
| ファシリテーター | 支援学校の教員 |
| サブスタッフ | 市の保健師(アフターフォロー担当) |
| 対象 | 就学前〜小学校低学年の保護者 |
学びの内容
- 子どもの行動を観察し、褒める(認める)こと
- 行動の原因を考え、対応を工夫すること
- 子どもへの上手な伝え方(CCQなど)
- 環境調整の具体的な方法
研修会形式ではなく、少人数での学び合いを重視しているのが大きな特徴です。参加者同士が自分の子どもの事例を共有しながら、具体的な対応方法を一緒に考えます。
成功のポイント
- 地域との連携:2017年からは気仙沼市の事業として実施され、学校と自治体が協力
- 継続的なフォロー:保健師がプログラム中の保護者の様子を観察し、終了後もアフターフォロー
- 地域に合わせた工夫:東日本大震災後の地域ニーズに応えたプログラム設計
教育現場でペアトレスキルを活かす
発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)は、教育・保育・福祉の支援者向けに、ペアトレの技法を現場で活かすための研修動画コンテンツを公開しています。
- 総論編:ペアトレの基本的な考え方と知識の習得
- 実践編:実際の支援場面での活用方法を段階的に学習
教員やスクールカウンセラーがこうしたスキルを身につけることで、保護者への日常的なアドバイスにもペアトレのエッセンスを取り入れることが可能になります。
家庭と学校の連携のポイント
ペアトレは、家庭と学校をつなぐ強力なツールです。効果的な連携のポイントをまとめます。
1. 一貫した対応方針
学校で使われている行動支援の方法(褒め方、指示の出し方など)を家庭でも実践することで、子どもはどこにいても同じルールで安心して過ごせます。
2. 連絡ノートの活用
特別支援学級や通級指導教室では、担当教員と保護者が連絡ノートで日々の情報を共有しています。ペアトレで学んだ行動観察の視点が加わることで、より具体的で建設的なやり取りが可能になります。
3. 個別の教育支援計画との連動
個別の教育支援計画は、乳幼児期から卒業後までの長期的な教育支援の方針を定めるものです。ペアトレで学んだ内容を支援計画に反映させることで、家庭での取り組みと学校の指導が一体となります。
放課後等デイサービスでのペアトレ
放課後等デイサービスでもペアトレが実施されています。子どものケアと同時に保護者向けのペアトレ講座を提供する「二重支援モデル」が特徴です。
放課後デイでのペアトレの特徴
- 子どもが通所中に保護者向け講座を実施
- 5〜10回の連続講座形式(1回あたり1.5〜2.5時間)
- 講義とワークの組み合わせ
- 子どもの日常的な様子をスタッフと共有しやすい
学べる内容
- 行動の3分類:好ましい行動・好ましくない行動・危険な行動の分類
- ABC分析:行動の前後の状況を分析する方法
- 効果的な褒め方と具体的な指示の出し方
- 環境調整:子どもが取り組みやすい環境の整え方
- 好ましくない行動への対応(計画的無視など)
効果研究が示すエビデンス
日本のペアトレに関する研究(2012〜2018年に発表された50〜51本の論文をレビュー)では、以下の効果が確認されています。
- 保護者の変化:養育自信度の向上、養育不安や抑うつの減少
- 子どもの変化:適応行動の増加、問題行動の減少
- 効果の持続:トレーニング終了後も効果が維持される
ただし、研究全体の傾向として、サンプルサイズが小さい(平均11名の保護者、10名の子ども)、対照群を設けた比較研究が少ないなどの課題も指摘されています。
年齢別のペアトレの特徴
| 年齢 | 特徴 |
|---|---|
| 幼児期(3〜6歳) | 基本的な行動習慣の形成、褒めて伸ばすアプローチの導入 |
| 小学校低学年 | 学校生活への適応、友人関係の構築、宿題・学習習慣の支援 |
| 小学校高学年〜中学 | 思春期に向けた自己理解の促進、自律性の育成 |
もともとペアトレは幼児期〜小学校低学年を主な対象としていましたが、近年は学齢期に合わせたプログラム開発も進んでいます。奈良方式のインストラクター養成講座では、小学生向けプログラムの専門研修も行われています。
まとめ
学校・教育現場でのペアトレは、まだ全国的に普及しているとは言えませんが、気仙沼支援学校「ひまわり教室」のような先進事例は、今後のモデルとなる可能性を持っています。
大切なのは、家庭と学校が同じ方向を向いて子どもを支えること。ペアトレで学んだスキルは、学校との日々のコミュニケーションをより豊かにし、子どもの成長を後押しする力になります。
ペアトレの技法をもっと知りたい方へ
行動の3分類やCCQなど、ペアトレの基本スキルについては以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:ペアレント・トレーニングとは | 主要6方式を徹底比較 | 厚労省ガイドブック解説

コメント