「ペアレントトレーニング(ペアトレ)に興味はあるけれど、まずは家庭でできることから始めてみたい」——そんな保護者の方は多いのではないでしょうか。ペアトレとは、子どもとの関わり方を学ぶプログラムで、応用行動分析(ABA)という科学的な理論をベースにしています。
この記事では、ペアトレの考え方を取り入れて家庭で今日から実践できる7つのステップをご紹介します。専門機関で受講するペアトレの全体像を家庭向けにアレンジした内容ですので、「まずやってみたい」という方にぴったりです。
ステップ1:子どもの行動を観察する
最初のステップは、子どもの行動を「事実」として観察することです。「落ち着きがない」「わがままだ」といった評価ではなく、「椅子から3回立ち上がった」「おもちゃを投げた」のように、具体的な行動として記録します。
【やってみよう】
まずは1日のうちの1場面(たとえば「朝の支度の時間」)を決めて、お子さんの行動を箇条書きでメモしてみましょう。
- いつ:朝7時〜7時半
- どこで:リビング
- 何をした:着替えの声かけから5分後に自分で着替え始めた
- その前後の状況:テレビがついていた → 消したら動き始めた
このように記録すると、行動のパターンや「きっかけ」が見えてきます。
ステップ2:行動を3つに分類する
観察した行動を次の3つのカテゴリに分けます。これはペアトレの基本中の基本です。
- 好ましい行動(増やしたい):自分で着替える、あいさつをする など
- 好ましくない行動(減らしたい):食事中に立ち歩く、大声で泣いて要求する など
- 危険な行動(すぐに止める):人を叩く、物を壊す、飛び出す など
分類に迷ったときは「その行動が続いても安全か?」を基準にすると判断しやすくなります。行動の3分類について詳しくは「行動の3分類とは?」の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
ステップ3:好ましい行動を具体的に褒める
分類ができたら、まず取り組むのは「好ましい行動を褒める」ことです。ペアトレでは「褒める」ことを最も大切なスキルと位置づけています。
効果的な褒め方のポイントは3つあります。
- すぐに:行動の直後に褒める(時間が経つと効果が薄れます)
- 具体的に:「えらいね」ではなく「自分でくつを揃えてくれたね、ありがとう!」
- 温かく:笑顔やスキンシップを添えて
【具体例】
宿題の場面で「自分から机に向かったね、すごいね!」と声をかけるだけで、子どもは「この行動をするといいことがある」と学びます。褒め方のコツをもっと知りたい方は「効果的な褒め方の3原則」をご覧ください。
ステップ4:CCQで指示を出す
CCQとは、指示を出すときの3つのポイントの頭文字です。
- C(Calm)穏やかに:感情的にならず、落ち着いたトーンで
- C(Close)近づいて:離れた場所から叫ぶのではなく、子どものそばで
- Q(Quiet)静かに:短く、はっきりとした言葉で
【具体例】
食事の場面で「いつまで遊んでるの!」と大声で言うのではなく、子どものそばに行って目線を合わせ、「ごはんだよ。おもちゃを箱に入れてね」と静かに伝えます。CCQについて詳しくは「CCQ — 指示の出し方」の記事をご覧ください。
ステップ5:環境を整える
子どもが望ましい行動を取りやすくなるように、環境そのものを工夫するのもペアトレの大事な考え方です。行動を変えるのは子どもだけでなく、「環境」も変えられるのです。
すぐにできる3つの工夫:
- 視覚支援:朝の支度の手順をイラストや写真で貼り出す。「次に何をすればいいか」が目で見てわかると、声かけの回数がぐっと減ります。
- ルーティン化:「ごはん → 歯みがき → 絵本 → おやすみ」のように毎日同じ流れを作ると、子どもは見通しを持って行動できます。
- 選択肢を用意する:「着替えなさい!」より「赤いシャツと青いシャツ、どっちにする?」と選ばせる方が、子どもは自分で動きやすくなります。
ステップ6:トークンエコノミー(ごほうびシート)を活用する
トークンエコノミーとは、好ましい行動ができたときにシールやスタンプなどの「トークン(しるし)」を渡し、一定数たまったらごほうびと交換できる仕組みです。「ごほうびシート」「がんばり表」などとも呼ばれます。
【始め方】
- 目標の行動を1〜2個に絞る(例:「朝、自分で顔を洗う」)
- できたらシールを1枚貼る
- シールが5枚たまったら、好きなおやつを選べる などのごほうびを決める
ポイント:最初はハードルを低めに設定して「成功体験」を積ませることが大切です。慣れてきたら少しずつレベルアップしましょう。ごほうびは物だけでなく、「一緒にゲームをする時間」など体験型もおすすめです。
ステップ7:困った行動にはスルー+注目のメリハリ
好ましくない行動(危険でないもの)に対しては、「計画的なスルー(無視)」が有効です。これは「子どもを無視する」のではなく、「その行動には注目しない」という意味です。
【具体例】
お菓子を買ってほしくてスーパーで泣き叫ぶ場面を考えてみましょう。
- 泣いている間は目を合わせず、穏やかに待つ(スルー)
- 少しでも泣き止んだ瞬間に「自分で泣き止めたね、えらいね」と褒める(注目)
つまり、「困った行動 → 注目しない」「好ましい行動 → すぐ褒める」というメリハリをつけることで、子どもは「どうすれば注目してもらえるか」を学んでいきます。
ただし、危険な行動(人を叩く、飛び出すなど)はスルーせず、すぐに安全を確保してください。
うまくいかないときの見直しポイント
「やってみたけれど変化がない」と感じたら、次の点を振り返ってみましょう。
- 目標が高すぎないか?:いきなり大きな変化を求めず、スモールステップで進めましょう。
- 褒めるタイミングは合っているか?:行動の「直後」に褒めることが重要です。時間が経ってからでは効果が薄れます。
- 家族間で対応は統一されているか?:お父さんとお母さんで対応が違うと、子どもは混乱します。家族で方針を共有しましょう。
- 記録を続けているか?:感覚だけでは変化に気づきにくいものです。1週間分の記録を見返すと、小さな成長が見えてきます。
- 保護者自身が疲れていないか?:ペアトレは保護者の心の余裕があってこそ。無理をせず、できる範囲で続けることが一番大切です。
まとめ
今回ご紹介した7つのステップをおさらいします。
- 子どもの行動を観察する
- 行動を3つに分類する
- 好ましい行動を具体的に褒める
- CCQで指示を出す
- 環境を整える
- トークンエコノミーを活用する
- 困った行動にはスルー+注目のメリハリ
これらはペアトレの基本的な考え方をベースにした方法ですが、あくまで家庭向けにアレンジしたものです。より体系的に学びたい方や、お子さんの特性に合わせた対応を相談したい方は、専門機関でのペアトレ受講をおすすめします。
お住まいの地域で開催されているペアトレ講座は全国のペアトレ講座・イベント一覧から探せます。また、ペアトレの全体像を知りたい方はペアトレ完全ガイドもあわせてご覧ください。
まずは今日、1つだけ試してみませんか? 小さな一歩が、親子の毎日を少しずつ変えていきます。


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