発達障害のある子どもの子育てに追われる中で、つい見落としてしまいがちなのが、きょうだい(兄弟姉妹)の気持ちです。「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから我慢して」「あの子は手がかかるから待ってね」――そんな言葉を、知らず知らずのうちに繰り返していませんか。
発達障害のある子の兄弟姉妹は「きょうだい児」と呼ばれ、独特の心理的負担を抱えやすいことが知られています。この記事では、きょうだい児が抱えがちな気持ちと、ペアレント・トレーニング(ペアトレ)の考え方を活かした公平な関わり方を解説します。
きょうだい児とは — 見えにくいストレスを抱える子どもたち
「きょうだい児」は、障害や病気のある子どもの兄弟姉妹を指す言葉です。発達障害のある子のきょうだいは、以下のような状況に置かれやすくなります。
- 親の関心や時間が、障害のあるきょうだいに集中する
- 「いい子」でいることを暗黙のうちに求められる
- きょうだいの癇癪やパニックに日常的にさらされる
- 友達に家庭の事情を説明しづらい
- 将来、きょうだいの世話をする責任を感じる
これらのストレスは、一つひとつは「大したことない」と思えるかもしれません。しかし、毎日の積み重ねが、きょうだい児の心に確実に影響を与えます。
きょうだい児が抱えやすい5つの気持ち
1. 寂しさ — 「自分は後回し」
発達障害のある子の対応に時間がかかるため、親はどうしてもそちらに手をとられがちです。きょうだい児は「自分のことは見てもらえない」「話を聞いてもらえない」と感じやすくなります。
特に、癇癪への対応がある子のきょうだいは、「あの子が泣き止むまでママ(パパ)は来てくれない」という経験を繰り返すことになります。
2. 怒り — 「なんで自分ばかり我慢するの?」
「あの子はできなくても怒られないのに、自分は怒られる」「あの子のせいで家族でお出かけできない」「友達を家に呼べない」――不公平感から怒りが生まれるのは自然なことです。
この怒りを「わがまま」として押さえ込んでしまうと、将来にわたって影響が残ることがあります。
3. 罪悪感 — 「怒っちゃいけない」「嫌いになっちゃいけない」
きょうだいに対してイライラしたり、「いなければいいのに」と思ったりすると、子どもは強い罪悪感を覚えます。「こんなことを思う自分は悪い子だ」と自分を責めてしまうのです。
4. 不安 — 「自分も障害があるのかも」「将来どうなるの?」
「自分にも同じような特性があるかもしれない」「大人になったら、きょうだいの面倒を見なければいけないのか」――年齢が上がるにつれて、将来への不安を感じるようになります。
5. 過剰な責任感 — 「自分がしっかりしなきゃ」
「お兄ちゃんなんだから」「お姉ちゃんがちゃんとしてくれて助かる」という言葉を受け続けると、子どもは「親を助けるために頑張らなきゃ」と思うようになります。一見「しっかりした良い子」に見えますが、内面では大きな負担を抱えています。
ペアトレの視点で考える — きょうだいへの公平な関わり方
ペアトレは「障害のある子どもへの対応」を学ぶプログラムとして知られていますが、実はきょうだいとの関わり方にも大いに応用できます。なぜなら、ペアトレの本質は「子どもの行動を理解し、効果的に関わる」ことであり、これはすべての子どもに共通するスキルだからです。
1. 行動の3分類をきょうだいにも適用する
行動の3分類の考え方は、きょうだい児にも同じように使えます。大切なのは、障害のある子にもきょうだいにも、同じ基準で行動を分類することです。
たとえば、「おもちゃを片付けた」は、どちらの子がやっても「好ましい行動」として褒めます。「叩く」は、どちらがやっても「危険な行動」として制止します。
障害のある子の「好ましくない行動」を大目に見て、きょうだいには厳しくするという不公平が生まれていないか、振り返ってみましょう。もちろん、発達の段階に応じた期待値の違いは当然ありますが、基本的な姿勢は一貫させることが大切です。
2. きょうだいの「好ましい行動」を見つけて褒める
きょうだい児は「いい子」でいることが当たり前と思われがちで、できて当然のことが褒められない状態に陥りやすくなります。
効果的な褒め方の技法を意識的にきょうだい児にも使いましょう。
- 「宿題、自分からやり始めたね」(当たり前に見えるけど言語化する)
- 「弟が泣いているとき、待っていてくれたね。ありがとう」
- 「お手伝いしてくれて助かったよ。ママ嬉しい」
- 「今日の学校の話、聞かせてくれてありがとう」
特に重要なのは、「きょうだいの面倒を見たから褒める」のではなく、「その子自身の行動を褒める」ことです。「弟の面倒を見てくれてありがとう」ばかりだと、「自分はケア要員なんだ」と感じてしまいます。
3. 「きょうだいだけの時間」を意識的につくる
きょうだい児にとって最も嬉しいのは、「自分だけに注目してもらえる時間」です。1日15分でもいいので、障害のある子がいない場で、きょうだいとだけ過ごす時間をつくりましょう。
- 寝る前に10分間、その日の話を聞く
- 週末に30分、一緒に好きなことをする
- 月に1回、二人だけでお出かけする
量より「質」が大切です。短い時間でも、「今、あなたのことを一番に見ているよ」というメッセージが伝わります。
4. CCQできょうだいの気持ちを受け止める
きょうだい児が怒ったり、泣いたり、「ずるい!」と不満を爆発させたとき。CCQ(穏やかに・近づいて・静かに)の姿勢が役立ちます。
- Calm(穏やかに):自分も動揺せず、落ち着いた態度で
- Close(近づいて):物理的に子どものそばに行く
- Quiet(静かに):「そう思ったんだね」「悔しかったんだね」と静かに気持ちを受け止める
「お兄ちゃんでしょ」「わがまま言わないの」と気持ちを否定するのではなく、まず「あなたの気持ちはわかるよ」と受け止めてから、必要な説明をしましょう。
5. きょうだいの発達特性にも目を配る
発達障害には遺伝的な要因もあり、きょうだいにも特性が見られることがあります。障害のある子への対応に追われて、きょうだい自身の発達上の課題を見落としてしまうケースは少なくありません。
「上の子は大丈夫」と思い込まず、きょうだいの行動や学習面にも注意を払いましょう。グレーゾーンとペアトレの記事も参考にしてください。
年齢別・きょうだい児への対応ポイント
幼児期のきょうだい(3〜6歳)
この時期のきょうだいは、「なぜ弟(妹)だけ特別扱いされるのか」を言語化できないまま、行動で不満を表します。赤ちゃん返り、わざと悪いことをする、激しく泣くなどの行動が見られたら、それは「自分を見てほしい」というサインです。
対応:「あなたも大事だよ」を言葉と行動で繰り返し伝えます。スキンシップを増やし、「好ましい行動」を見つけたら即座に褒めましょう。
小学校低学年のきょうだい(6〜9歳)
友達から「なんでお兄ちゃん変なの?」と聞かれる場面が出てきます。恥ずかしさや戸惑いを感じやすい時期です。
対応:「お兄ちゃん(弟・妹)は、○○が得意で、△△は苦手なんだよ。みんな得意なことと苦手なことがあるよね」と、年齢に合った言葉で説明します。発達障害そのものの説明は不要で、「得意・不得意」のフレームで伝えるのがこの年齢には適切です。
小学校高学年〜中学生のきょうだい(10歳〜)
発達障害について自分で調べたり、考えたりし始める年齢です。「自分にも遺伝しているのか」「将来、面倒を見なければいけないのか」という不安が具体化します。
対応:率直に話し合いましょう。「あなたの人生はあなたのもの。きょうだいのために犠牲になる必要はない」と明確に伝えることが大切です。将来の支援体制は親の責任で考えることであり、きょうだいに過度な期待をかけないようにしましょう。
きょうだい児の支援リソース
きょうだい児を支援するための活動や団体も広がっています。
- シブリングサポーター:きょうだい児を対象にした遊びやワークショップを実施する支援者
- きょうだい児の会:同じ立場のきょうだいが集まって話し合える場
- ペアトレ講座:きょうだい関係の改善にも応用できるスキルを学べる
全国のペアトレ講座・イベント一覧で、お住まいの地域のペアトレ講座を探してみてください。きょうだい関係の悩みを相談できる場にもなります。
親自身へ — 「きょうだいに申し訳ない」という気持ちへ
この記事を読んで、「うちのきょうだい児に十分なことをしてあげられていない」と罪悪感を覚えた方もいるかもしれません。
その気持ちこそが、あなたがきょうだいのことも大切に思っている証拠です。完璧な対応は誰にもできません。ペアトレの精神は「今より少しだけ良い関わり方」を目指すこと。効果を感じられないときに見直すポイントと感じる日があっても、取り組み続けること自体に価値があります。
障害のある子の子育ても、きょうだいへの配慮も、親自身のケアも――すべてを一人で抱える必要はありません。子育てのイライラとペアトレが限界に達する前に、パートナー、家族、専門家、ペアトレ講座の仲間に助けを求めてください。
まとめ — きょうだい児への5つの関わり方
- 行動の3分類を全員に公平に適用する — 障害のある子にもきょうだいにも一貫した基準で
- きょうだいの「好ましい行動」を意識的に褒める — 「当たり前」を言語化する
- 「その子だけの時間」を意識的につくる — 量より質。「あなたを見ているよ」を伝える
- 気持ちを否定せず受け止める — CCQの姿勢で「あなたの気持ちはわかるよ」と伝える
- 年齢に合った説明と対話を — きょうだいの発達段階に応じた情報提供を
きょうだい児もまた、支援を必要としている子どもです。ペアトレで学ぶ「行動を観察し、良いところを見つけて褒める」というシンプルな原則は、家族全員の関係を良くする力を持っています。
ペアトレ完全ガイドでペアトレの全体像を学び、ペアトレの具体的なやり方で具体的な実践方法を確認してください。全国のペアトレ講座・イベント一覧では、全国のペアトレ講座を検索できます。家族全員が笑顔で過ごせるヒントが、きっと見つかります。

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