基礎知識

厚労省ガイドブックから読み解く「ペアトレの標準モデル」— 国が推進する6つのコアエレメントとは

厚労省ガイドブックから読み解くペアトレの標準モデル

ペアレント・トレーニング(ペアトレ)は、もはや個別のクリニックや大学だけの取り組みではありません。国の施策として全国の自治体への普及が進んでいます

この記事では、厚生労働省の推進事業でつくられた公式資料や関連施策をもとに、ペアトレが国の制度の中でどう位置づけられているかを解説します。2冊とも厚労省が定めた基準ではなく、国の事業の助成を受けて一般社団法人 日本発達障害ネットワーク(JDDnet)が作成した手引きです(後述)。

最終更新:2026年9月4日|このページが引用している一次資料(厚生労働省の2つのPDFと2つの実施要綱)は、いずれも2026年9月4日に本文を開いて確認しています。書誌情報と引用のしかたは「出典と引用について」にまとめました。

  1. このページの要点
  2. 厚労省の推進事業でつくられた2つの公式資料
    1. 1. ペアレント・トレーニング実践ガイドブック(令和元年度)
    2. 2. ペアレント・トレーニング支援者用マニュアル(令和2年度)
  3. ガイドブックが示すペアトレの定義
  4. 「基本プラットフォーム」とは
    1. 6つのコアエレメント
    2. 運営の原則
    3. 実施者の専門性
  5. 発達障害者支援施策の中のペアトレ
    1. 家族支援事業の5本柱
  6. 令和4年 児童福祉法改正 — ペアトレが法律に
    1. 親子関係形成支援事業の概要
  7. 普及に向けた国の取り組み
  8. NCNPの役割
  9. 6つのコアエレメントを日常生活で実践するイメージ
    1. コアエレメント1:良いところを探して褒める
    2. コアエレメント2:行動の3分類
    3. コアエレメント3:ABC分析
    4. コアエレメント4:環境調整
    5. コアエレメント5:達成しやすい指示
    6. コアエレメント6:不適切な行動への対応
  10. 2つの資料に何が収録されているか(目次と収録シート)
    1. ペアレント・トレーニング実践ガイドブック(本文43ページ)の目次
    2. 支援者用マニュアルの目次と収録シート
  11. ガイドブックの活用方法 — 保護者の視点から
  12. ガイドブックが生まれた背景と意義
  13. コアエレメントと各方式の対応関係
  14. 保護者として知っておきたい制度的な権利
  15. よくある質問(Q&A)
    1. Q1. 国の標準モデルに沿っていない講座もあるのですか?
    2. Q2. ペアトレの講座は全国どこでも受けられますか?
    3. Q3. ペアトレの質はどうやって保証されていますか?
    4. Q4. 「実施前の情報収集シート」など、資料に入っているシートを探しています
  16. 出典と引用について
    1. このページが使った一次資料
    2. このページを引用・リンクするとき
    3. このページの訂正
  17. まとめ

このページの要点

  • この2冊が示す標準モデルの名前は「基本プラットホーム」。①コアエレメント ②運営の原則 ③実施者の専門性 の3つでできています(実践ガイドブック p.11)
  • 実施するプログラムを「ペアレント・トレーニング」と呼ぶためには、6つのコアエレメントが必須です(同 p.11〜14)
  • 運営の目安は全5回以上・概ね隔週・1回90〜120分・1グループ4,5人〜7,8人。終了2〜3か月後のフォロー回が強く推奨されています(同 p.15)
  • 実施者は職種を問いません。子どもの発達支援に携わる人が養成研修を受けて実施します(同 p.16)。国家資格ではありません

厚労省の推進事業でつくられた2つの公式資料

1. ペアレント・トレーニング実践ガイドブック(令和元年度)

令和元年度障害者総合福祉推進事業として、一般社団法人日本発達障害ネットワーク(JDDnet)事業委員会が作成し、日本ペアレント・トレーニング研究会が協力しています。発行日は2020年3月31日、本文43ページ。ペアトレの定義、標準モデル(基本プラットホーム)、自治体・医療機関での実施例、Q&A、用語解説までが収録されています。奥付には「転載または引用の場合は必ず出典を明記のこと」と書かれています。収録内容は目次の一覧に並べました。

PDFはこちら(厚労省サイト)

2. ペアレント・トレーニング支援者用マニュアル(令和2年度)

正式には、令和2年度障害者総合福祉推進事業「地域の発達障害者支援機関等で実施可能なペアレント・トレーニング実施テキストの作成」報告書(2021年3月・JDDnet)の資料1です。同じPDFの資料2には、参加する保護者に配る「親用テキスト」(全6回分のスライド)も収録されています。マニュアルが示すプログラムは隔週・1回2時間・全6回の連続講座で、対象は3歳児〜小学校3年生くらいの子どもの保護者、1グループおおむね4〜8名をスタッフ1〜3名で運営する想定です(マニュアル p.2)。冒頭には「使用される際は必ず引用を記載いただくようお願いいたします」と書かれています(同 p.1)。収録シート名はこちらの一覧にそのまま並べました。

PDFはこちら(厚労省サイト)

ガイドブックが示すペアトレの定義

ペアトレは、環境調整や子どもへの肯定的な働きかけを学び、保護者や養育者の関わり方や心理的なストレスの改善、子どもの適切な行動の促進と不適切な行動の改善を目的としたプログラムです。

ペアレント・トレーニング実践ガイドブック p.6(2-1 厚生労働省の発達障害者支援施策における家族等支援)

この定義は、系統(精研・まめの木・奈良式、肥前式、鳥取大学式)を超えた共通の土台として置かれているものです。ただしこれは厚労省が告示や通知で定めた定義ではありません。ガイドブックの「はじめに」(p.1)は「本ガイドブックは、厚生労働省障害者総合福祉推進事業(2019年度)…における全国自治体・事業所などのペアトレ実態調査結果、および全国のペアトレ実践者・研究者のコンセンサスによって作成され」たものだと書いており、奥付(p.44)の作成者も一般社団法人 日本発達障害ネットワーク JDDnetです。国が定めた文書は、次の段落の「実施要綱」のほうです。

制度の側でも書き分けは明確で、厚生労働省の「発達障害児者及び家族等支援事業実施要綱」は、ペアレント・トレーニングを「主に、子どもへの対応方法を身につける」もの、ペアレント・プログラムを「主に、子どもの観察方法を身につける」ものとしています(障発0409第8号・平成30年4月9日/一部改正 令和2年3月24日)。

「基本プラットフォーム」とは

日本ペアレント・トレーニング研究会が開発した標準的なモデルです(支援者用マニュアル p.2)。実践ガイドブックはこれを「実施者の拠り所となる共通の土台」と説明し、実施するプログラムを「ペアレント・トレーニング」と呼ぶためには必須となるものと書いています(同 p.11)。中身は①コアエレメント(プログラムの核となる要素)②運営の原則 ③実施者の専門性の3つです。

原典の表記は「基本プラットホーム」(ホーム)です。「基本プラットフォーム」と書かれることも多いため、このページでは一般的な表記を見出しに使い、原典から引くところは原典どおりに書いています。

6つのコアエレメント

番号コアエレメント(ガイドブックの表記)内容掲載
1子どもの良いところ探し&ほめる子どもの適応的な行動に注目し、行動のあとに子どもにとってプラスの状況(ほめる・好む活動を用意する)をもたらせるよう、特性に応じたほめ方を身につけるp.12〜13
2子どもの行動の3つのタイプわけ「好ましい行動」「好ましくない行動」「許しがたい行動」の3つに分ける。まず「好ましい行動」に注目してほめることから始めるp.13
3行動理解(ABC分析)A「行動の前のきっかけ」-B「行動」-C「行動の後の結果」に分けて観察し、子どもの行動の理由がわかるようになるp.13
4環境調整(行動が起きる前の工夫)子どもの周囲の環境(人や物)を整え、適応的な行動をしやすくする。ABC分析の「A」にあたるp.13〜14
5子どもが達成しやすい指示おだやかに(Calm)子どもの近くに行き(Close)静かな声で(Quiet)=CCQでわかりやすく伝え、少しでもやろうとしたらほめるp.14
6子どもの不適切な行動への対応「計画的な無視(ほめるために待つ)」を行い、少しでも好ましい行動がみられたらほめる。「ほめる」かかわりが定着していることが前提p.14

出典:実践ガイドブック p.12〜14(表1 コアエレメントの内容)。「許しがたい行動」への警告・タイムアウトはコアエレメントには含まれず、オプションとして扱われています(同 p.13)。

運営の原則

  • 個別実施よりもグループでの実施が推奨される
  • 全5回以上、概ね隔週で1回
  • 1回のセッションは90〜120分程度がめやす
  • 参加人数は1グループ4,5人〜7,8人(欠席があってもグループとして成立する人数)
  • 講義+演習・ロールプレイ+ホームワークの組み合わせ。各回の内容は連続しているため、参加者は原則として全回に出席する
  • 終了2〜3か月後に「フォロー回(振り返りの回)」を設けることが強く推奨される

出典:実践ガイドブック p.15(3-2-2 運営の原則)。同書は、5回程度のプログラムでは、コアエレメントを含んでいても終了後しばらくすると「ほめる⇔ほめられる」関係が保てなくなると感じる親が少なくない、と書いています。

実施者の専門性

実践ガイドブックは、実施者に必要なものを資格ではなくスキルで書いています。コアエレメントの内容を理解して親に助言できること、親のこれまでのかかわり方を否定せずに子どもに適したかかわり方を提案できること、子どもの成長や親の養育スキルの獲得を小さなことから見つけてフィードバックできることなどです。そのうえで「職種を問わず、子どもの発達支援に携わる方であれば、養成研修を受講して、研鑽を続けることでペアレント・トレーニングを実施することができます」と明記しています(p.16)。ペアトレの実施者は国家資格ではありません。

運営には、講義やグループの進行を行うファシリテーターと、参加者の様子を観察して発言や変化を記録するサブファシリテーターが必要とされています(同 p.16)。養成研修は、日本ペアレント・トレーニング研究会の指導者研修や、ガイドブックが推奨するプログラムを実施している機関などで行われています(同 p.16 注1)。

発達障害者支援施策の中のペアトレ

厚労省の発達障害者支援施策の中で、ペアトレは「発達障害児者及び家族等支援事業」の5つの事業のうち「家族のスキル向上支援事業」に置かれています。実施主体は都道府県と市区町村で、5つのうちいずれか、または複数を実施することになっています(実施要綱・PDF)。

家族支援事業の5本柱

  1. ペアレントメンター養成等事業 — 発達障害児の子育て経験のある親を「ペアレントメンター」として養成し、活動を支援する。相談希望者とメンターを結びつけるコーディネーターの配置も行う
  2. 家族のスキル向上支援事業 — ペアレント・プログラム(主に子どもの観察方法)とペアレント・トレーニング(主に子どもへの対応方法)を実施し、開催を地域住民に情報提供する。実施できる人を養成する研修も行う
  3. ピアサポート推進事業 — 保護者・配偶者・きょうだい・本人同士が集まり、相談や情報交換を行う場を支援する(参加しやすいよう託児の実施なども求められている)
  4. 発達障害者等青年期支援事業 — 青年期の居場所づくり。ワークショップの開催と専任職員の配置
  5. その他の本人・家族支援事業 — ソーシャルスキルトレーニング(SST)など

出典:発達障害児者及び家族等支援事業実施要綱(障発0409第8号・平成30年4月9日/一部改正 障発0324第7号・令和2年3月24日、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)。事業名はこの要綱の表記です。

令和4年 児童福祉法改正 — ペアトレが法律に

2022年6月、児童福祉法が改正され(令和4年法律第66号)、親子関係形成支援事業」が新たに法定化されました(児童福祉法 第6条の3第21項・令和6年4月施行)。市町村が実施する事業で、その中核がペアレント・トレーニングです。

親子関係形成支援事業の概要

根拠児童福祉法 第6条の3第21項(市町村が実施する事業)
目的親子間における適切な関係性の構築
対象保護者に監護させることが不適当と認められる/養育の支援が特に必要と認められる児童とその保護者。乳幼児健診や関係機関からの情報提供などで市町村が支援を必要と認めた児童とその保護者
内容講義、グループワーク、個別のロールプレイ等を内容としたペアレント・トレーニング等。同じ悩みを持つ保護者同士が相談・情報交換できる場も設ける
回数・時間概ね5〜8回(各回90〜120分程度)を目安に、4回以上の連続講座として実施
定員10名程度を目安に、原則としてグループで実施
実施者児童に関わる業務に従事していた経験、または市町村が認める研修の受講歴・資格を持ち、適切に実施できると市町村が認めた者。実施者をサポートし記録を行う者の配置が望ましい
実施主体市町村(特別区・一部事務組合を含む)。市町村が適切と認めた者に委託できる
所管こども家庭庁 成育局(こども家庭庁は令和5年4月発足)

出典:親子関係形成支援事業実施要綱(こ成環第106号・令和6年3月30日/一部改正 こ成環第164号・令和7年4月1日/一部改正 こ成環第238号・令和8年4月8日、こども家庭庁成育局長通知)。

これにより、ペアトレは単なる「良い取り組み」から法的根拠のある支援事業へと格上げされました。全国の市町村での実施が進むことが期待されています。

普及に向けた国の取り組み

年度取り組み
令和元年度「ペアレント・トレーニング実践ガイドブック」作成
令和2年度「支援者用マニュアル」作成
令和4年児童福祉法改正で「親子関係形成支援事業」法定化
令和5年こども家庭庁発足、施策の一部移管
令和6年度親子関係形成支援事業の施行開始

さらに、国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターが、支援者向けの動画「ペアレント・トレーニングの地域普及をめざして」を無料公開しています。実践ガイドブックの内容説明、支援者用マニュアルの内容説明、基本プラットホームの実践報告が収録されており、2つの資料を読む前後の手がかりになります。

NCNPの役割

国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、医療機関でペアトレを行う専門職の養成に関わっています。

  • 実施者養成研修:「医療機関における注意欠如・多動症(ADHD)児の親へのペアレント・トレーニング実施者養成研修」を開催(第1回 2022年度/第2回 2023年度)。講義を受け、ワークやロールプレイを実際に体験する構成です
  • この研修の対象は、ADHDと診断される児童の診療に関わる医療機関の専門職(医師、公認心理師や臨床心理士等の臨床心理技術者、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、言語聴覚士)です
  • 実践ガイドブックを作成した事業委員にも、NCNPの研究者が名を連ねています(同書 事業委員名簿)

「医療機関の専門職向けの研修」であって、ペアトレの実施者一般に求められる資格ではありません(ガイドブックは職種を問わないと書いています)。また、支援者向けの動画を公開している発達障害情報・支援センターは、NCNPではなく国立障害者リハビリテーションセンターrehab.go.jp/ddis/)が運営しています。

6つのコアエレメントを日常生活で実践するイメージ

6つのコアエレメントは抽象的に聞こえるかもしれませんが、実際の生活場面ではどのように使われるのでしょうか。具体例を見てみましょう。

コアエレメント1:良いところを探して褒める

【場面】夕食の準備中、小学1年生のお子さんが自分から宿題のプリントを出してきた。
【実践】「自分からプリントを出してきたんだね!すごいね!」と具体的な行動を即座に褒めます。「えらいね」ではなく「何が良かったか」を言葉にするのがポイントです。詳しくは効果的な褒め方の3原則をご覧ください。

コアエレメント2:行動の3分類

【場面】お子さんの行動を1日分記録し、3つに分類してみます。
【好ましい行動】自分で靴を揃えた、「いただきます」が言えた
【好ましくない行動】食事中に立ち歩いた、テレビの前から離れなかった
【許しがたい(危険な)行動】弟を叩いた
分類すると「好ましい行動は褒める」「好ましくない行動は無視する」「許しがたい行動は制止する」と、対応の方針が明確になります。詳しくは行動の3分類をご覧ください。

コアエレメント3:ABC分析

【場面】スーパーで子どもがかんしゃくを起こした。
【A(きっかけ)】お菓子コーナーの前を通った
【B(行動)】「買って!」と泣き叫んだ
【C(結果)】親が折れてお菓子を買った
→ この場合、「泣き叫ぶとお菓子が買ってもらえる」と子どもが学習しています。A(きっかけ)を変える=お菓子コーナーを避けてルートを変える、あるいはC(結果)を変える=泣いても買わない、という対応が考えられます。癇癪とペアトレの記事も参考にしてください。

コアエレメント4:環境調整

【場面】宿題中に気が散って集中できない。
【実践】机の上からおもちゃや漫画を片付ける、テレビを消す、「宿題→おやつ」の流れを視覚的にカードで示す。問題行動が起きてから対処するのではなく、起きる前に環境を整えるのがポイントです。詳しくは環境調整のコツをご覧ください。

コアエレメント5:達成しやすい指示

【場面】出かける前の身支度を急いでほしい。
【NG】「早くしなさい!」「ちゃんとして!」(曖昧で否定的)
【OK】子どもの近くに行き、目を見て、穏やかに「靴下を履こう」と一つだけ伝える。CCQ(穏やかに・近づいて・静かに)の原則を使うと、指示が子どもに伝わりやすくなります。

コアエレメント6:不適切な行動への対応

【場面】食事中にわざとスプーンでテーブルを叩いている。
【実践】危険でなければ「計画的に無視」します。反応しないことで、「叩いても注目が得られない」と学習します。叩くのをやめてスプーンで食べ始めたら、すかさず「スプーンで上手に食べているね!」と褒めます。無視と褒めのコントラストが重要です。

2つの資料に何が収録されているか(目次と収録シート)

「あの資料に入っていたシートをもう一度見たい」「講義の回タイトルを確認したい」という探し方をされることが多いので、収録されているものを名前のまま並べます。ページ番号は資料の本文ページです。

ペアレント・トレーニング実践ガイドブック(本文43ページ)の目次

  • 第1章 発達障害(p.3〜5)
  • 第2章 発達障害における家族支援 — 2-1 厚生労働省の発達障害者支援施策における家族等支援(p.6)/2-2 発達障害のある子どもの家族が抱える問題と支援(p.7〜8)
  • 第3章 発達障害支援におけるペアレント・トレーニング — 3-1 ペアレント・トレーニングとは(p.9〜10)/3-2 基本プラットホーム(p.11〜17)/3-3 グループワーク(p.18〜19)/3-4 オプション(p.20〜21)/3-5 推奨プログラム(p.22〜23)/コラム 参加者の声(p.24)
  • 第4章 ペアレント・トレーニングを地域で実施するために — 4-1 地域で実施するために大切なこと(p.25)/4-2 実施例:大阪府堺市(p.26〜27)、兵庫県明石市(p.28〜29)、宮城県気仙沼市(p.30〜31)、まめの木クリニック(p.32〜33)
  • おわりに(p.34)/Q&A(p.35〜40)/用語解説(p.41)/参考図書・参考WEBサイト(p.42〜43)

支援者用マニュアルの目次と収録シート

  • 第1章 基本プラットホームに基づくプログラム — (1)プログラムと各回の流れ(2)グループワークのコツ(3)ファシリテーターの専門性(4)プログラムの運営(5)評価とフォローアップ
  • 第2章 講義マニュアル — 第1回「発達が気になる子どもとペアレント・トレーニング」/第2回「子どもの行動観察と3つのタイプ分け」/第3回「子どもの行動の仕組みを理解しよう」/第4回「楽しくほめよう〜環境調整と親子タイム〜」/第5回「子どもが達成しやすい指示を出そう」/第6回「待ってからほめよう〜上手な注目の外し方〜」
  • 第3章 演習シート — ①「ほめる」②「環境調整」③「達成しやすい指示」④「待ってからほめる」
  • 第4章 ホームワークシート — ①「いっぱいほめようシート」②「行動の3つのタイプ分けシート」③「行動のABCシート」④「スペシャルタイム」⑤「伝え方ふりかえりシート」
  • 巻末資料 — ①「開催案内文の例」②「託児案内文書の例」③「フェイスシート例」④「タイムスケジュール例」⑤「運営記録シート」⑥「個別カンファレンスシート」⑦「アンケート例(毎回&修了後)」
  • 資料2「親用テキスト」 — 参加する保護者に配る全6回分のスライド(同じPDFに収録)

よく「実施前の情報収集シート」という名前で探されますが、その名称のシートは実践ガイドブックにも支援者用マニュアルにも収録されていません。近いのは巻末資料③の「フェイスシート例」(参加者の基本情報を書く様式)です。

ガイドブックの活用方法 — 保護者の視点から

厚労省のガイドブックは本来、支援者(心理士や保健師)向けに書かれていますが、保護者が読んでも得られるものは多くあります。

  • ペアトレの「正しい形」を知る:講座を選ぶ際に、「このプログラムは国の基準に沿っているか」を判断する材料になります
  • 自分が学んでいることの位置づけを理解する:受講中に「今、6つのコアエレメントのどこを学んでいるのか」が分かると、学びが構造化されて理解が深まります
  • 家族への説明に使える:「国が推奨しているプログラムなんだよ」と説明することで、配偶者や祖父母の理解・協力を得やすくなります

ガイドブックのPDFは無料でダウンロードできますので、興味のある方はぜひ目を通してみてください。

ガイドブックが生まれた背景と意義

なぜ厚労省はペアトレの「ガイドブック」を作成したのでしょうか。その背景には、ペアトレの全国普及に伴う「質のばらつき」という課題がありました。

2000年代以降、ペアトレは急速に全国に広がりましたが、その過程で「ペアトレと名乗っているが内容が大きく異なるプログラム」も出てきました。精研・まめの木・奈良式、肥前式、鳥取大学式といった系統がある中で、「最低限、これだけは含まれていなければペアトレとは呼べない」という基準が必要になったのです。

ガイドブックの作成にあたっては、日本発達障害ネットワーク(JDDnet)のもと、各方式の開発者が一堂に会し、方式を超えた共通要素を議論しました。その結果が「基本プラットフォーム」と「6つのコアエレメント」です。これは各方式の独自性を否定するものではなく、「どの方式でも共通して含めるべき最低限の要素」を定めたものです。

ペアトレの歴史的な経緯について詳しく知りたい方は、日本におけるペアトレの歴史と発展の記事をご覧ください。

コアエレメントと各方式の対応関係

6つのコアエレメントは、どの方式にも共通していますが、各方式によって重点の置き方や扱うセッション数が異なります。

  • 精研・まめの木・奈良式:米国UCLAで開発されたADHDのある子どもの保護者向けプログラムが基礎。現在はASDの問題にも適用できるよう工夫され、発達障害全般のプログラムに発展している。回数は10回程度で、グループワークではとくにロールプレイを重視する(精研式の解説
  • 肥前式:国立肥前療養所(現・肥前精神医療センター)の行動療法の実践に基づき、知的障害をともなうASDの子どもの保護者を共同治療者として育てるプログラムから出発した。回数は10回程度。セッション前半は全体での行動理論の講義、後半は3名程度の小グループで家庭での実践を話し合う
  • 鳥取大学式:応用行動分析に基づき、知的障害をともなうASDのある子どものコミュニケーションスキルや適応的な行動の獲得を親が学ぶプログラムから発展した。回数は6〜8回程度。補助治療者としてのペアレント・メンターの参加も推奨している

出典:実践ガイドブック p.22〜23(表3 3つのペアレント・トレーニングのプログラムの特徴)。3つとも、普及のための指導者養成研修が行われているプログラムです。

どの系統を選んでも6つのコアエレメントは学べますので、「お住まいの地域で受けられるもの」「スケジュールが合うもの」で選んで問題ありません。主要な方式の比較ペアトレの探し方の記事も参考にしてください。

保護者として知っておきたい制度的な権利

ペアトレが法律に位置づけられたことで、保護者には以下のような「権利」があることを知っておきましょう。

  • 相談する権利:お住まいの自治体の発達障害者支援センターに、ペアトレの実施状況について問い合わせることができます
  • 要望する権利:お住まいの自治体でペアトレが実施されていない場合、子育て支援課や障害福祉課に「ペアトレを実施してほしい」と要望を出すことができます。親子関係形成支援事業は法定化されているため、自治体には実施に向けた努力義務があります
  • 選択する権利:複数の講座が利用可能な場合、自分に合ったものを選ぶことができます。オンラインも含めて選択肢は広がっています

「ペアトレを受けたいのに受けられない」という状況は、制度的に改善されつつあります。まずは受講の流れを確認し、行動を起こしてみてください。費用についてもこちらで詳しく解説しています。

よくある質問(Q&A)

Q1. 国の標準モデルに沿っていない講座もあるのですか?

A. 「ペアレント・トレーニング」と名乗る講座のすべてが国の基準に沿っているとは限りません。基本プラットフォームの6つのコアエレメントを含んでいるか、行動理論をベースとしているか、ロールプレイやホームワークがあるかなどが判断材料になります。自治体が主催する講座や、養成研修を受けた実施者が担当する講座は、基本的に安心して受講できます(ペアトレの実施者に国家資格や認定制度はありません。実施者の専門性を参照)。

Q2. ペアトレの講座は全国どこでも受けられますか?

A. 現時点ではすべての市町村で実施されているわけではありませんが、令和6年度からの「親子関係形成支援事業」の施行により、実施自治体は増加傾向にあります。お住まいの地域で見つからない場合は、都道府県の発達障害者支援センターに相談するか、オンラインで受講できる講座を探してみてください。全国のイベント一覧も参考にしてください。

Q3. ペアトレの質はどうやって保証されていますか?

A. 国としては「基本プラットフォーム」と「6つのコアエレメント」で最低限の質を担保する仕組みを整えています。また、日本ペアレント・トレーニング研究会の指導者研修や各方式のファシリテーター養成研修、NCNPの医療機関向け研修を通じて、支援者のスキルアップも図られています。受講者として講座の質が気になる場合は、実施者の研修歴を確認するとよいでしょう。

Q4. 「実施前の情報収集シート」など、資料に入っているシートを探しています

A. 支援者用マニュアルに収録されているのは、演習シート4種・ホームワークシート5種・巻末資料7種です。名前は収録シートの一覧にそのまま並べてあります。なお「実施前の情報収集シート」という名称のシートは、実践ガイドブックにも支援者用マニュアルにも収録されていません(近いのは巻末資料の「フェイスシート例」です)。

出典と引用について

このページが使った一次資料

資料書誌原文
ペアレント・トレーニング実践ガイドブック令和元年度障害者総合福祉推進事業/作成 一般社団法人日本発達障害ネットワーク(JDDnet)事業委員会/協力 日本ペアレント・トレーニング研究会/発行日 2020年3月31日/本文43ページ厚生労働省(PDF)
ペアレント・トレーニング支援者用マニュアル/親用テキスト令和2年度障害者総合福祉推進事業「地域の発達障害者支援機関等で実施可能なペアレント・トレーニング実施テキストの作成」報告書(2021年3月・JDDnet)の資料1・資料2厚生労働省(PDF)
発達障害児者及び家族等支援事業実施要綱障発0409第8号(平成30年4月9日)/一部改正 障発0324第7号(令和2年3月24日)・厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知厚生労働省(PDF)
親子関係形成支援事業実施要綱こ成環第106号(令和6年3月30日)/一部改正 こ成環第164号(令和7年4月1日)/一部改正 こ成環第238号(令和8年4月8日)・こども家庭庁成育局長通知こども家庭庁(PDF)掲載ページ

最終確認日:2026年9月4日(4件とも本文を開いて確認しています)。2つの資料は、それぞれ奥付と冒頭で「引用の際は出典を明記すること」を求めています。研修資料などに載せる場合は、厚生労働省サイトの利用規約もあわせてご確認ください。

このページを引用・リンクするとき

リンクは自由です。事前の連絡や許諾は必要ありません。自治体・支援機関・医療機関のページや配布資料からのリンクも歓迎します。引用される場合は、ページ名とURLを出典として書き添えてください(全文の転載はご遠慮ください)。

ペアトレJP「厚労省ガイドブックから読み解く『ペアトレの標準モデル』」
https://pt-jp.com/archives/mhlw-guidebook-standard-model(2026年9月4日更新)

節ごとに固定のリンク先(アンカー)を付けてあります。6つのコアエレメントの表は #core-elements、運営の原則は #operation、実施者の専門性は #implementer、収録シートの一覧は #contents-manual、この出典一覧は #sources です。URLの末尾に付けると、その節を名指しでリンクできます。

このページの訂正

誤りを見つけられた場合はお問い合わせからお知らせください。訂正したときは、いつ何を直したかをここに残します。

  • 2026年9月4日:一次資料を読み直し、運営の目安(回数・時間・人数)、実施者の専門性、コアエレメントの名称、親子関係形成支援事業の回数、発達障害情報・支援センターの運営主体を、実践ガイドブックおよび各実施要綱の記述に合わせて訂正しました。
  • 2026年9月4日:親子関係形成支援事業実施要綱の版を、一部改正 こ成環第238号(令和8年4月8日)まで反映しました。あわせて出典表から要綱のPDFに直接たどれるようにしました。

まとめ

ペアレント・トレーニングは、厚労省の実践ガイドブックと支援者用マニュアル、そして児童福祉法への法定化を通じて、国が推進する家族支援プログラムとして位置づけられています。実践ガイドブックは「これまで多くの研究で、ペアレント・トレーニングは親の養育スキルの向上やストレスの低減、子どもの適応的な行動の獲得、問題行動の改善に効果があることが明らかとなっています」と書いています(p.9)。

お住まいの地域でのペアトレ実施状況は、自治体の子育て支援窓口や発達障害者支援センターにお問い合わせください。

関連記事:行動の3分類褒め方のコツCCQ環境調整受講の流れイベント一覧


関連記事:主要な方式の比較(3系統)

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